平 尾ラグビーの場合、以前よく見られたのが、グラウンドにある観戦台に座って「なんでそこでタックルに行かなんだ!」と怒鳴ってばかりいる監督です。でも、そうやって怒っているだけではダメなんですよね。何でタックルに行かないのかを分析してあげないと。体力がないのか、技術がないのか、行く気持ちがないのか。それによって、アプローチの方法は違ってくる。行く気は満々なのに技術がないなら、そこにはコース取りが悪いとか、体の入れ方が悪いとかいろいろな原因があるわけです。それを選手に気づかせてあげて、自ら克服しようとする方向に導いてあげるのが、指導者のあり方だと思います。それを、「タックルは根性だ」だけで片付けてしまっては、選手は上手くならない。

吉 原私も外国人の監督の下でプレーした時に、選手の自主性を促す指導が大事だということを実感しました。

平 尾ある本に、日本の女性スポーツというのは、東京オリンピック女子バレーの大松(博文)監督の成功モデルのように、ある程度選手を追いつめて闘争心を起こさせないと成功しないというようなことが書かれてありました。やっぱりそういった意識が、指導者にはまだあるのでしょうか。

吉 原
指導者側には、たぶんあると思います。でも、さっきも言ったように、何のための練習なのか納得できないと、チーム内の状況は悪くなりますね。たとえば、特定の選手に、「レシーブ100本」というハードな練習をさせたとします。レシーブが下手だからなのか、闘争心を沸き立たせるためなのか、自信を持たせるためなのか、いろいろ理由はあると思いますが、それが選手に伝わらないと、「何で私だけが…」というような気持ちが芽生えてきてしまいます。
 大松監督の時代は、あまり自分をアピールする選手はいなかったかも知れませんが、今の選手は個性というか、自分の考えをしっかり持っています。だからこそ、説明が必要だと思います。

平 尾時折、テレビの特集などで、全日本のハードな練習を見たりします。とくに、若手選手に対して、行われていることが多いように思いました。

吉 原若い選手は、これから世界と戦っていくために、もっと精神的に強くならなければいけない部分もあって、そういう練習につながっているんだと思います。ただ、選手の性格によって、それで精神的に強くなれる場合もあれば、逆にバレーボール自体を嫌いになってしまう場合もあります。そのあたりを見抜いて、その選手にあった方法を考えていくの方が、近道だと思いますね。

平 尾そうなんですよね。結局、それでバレーを嫌いになってしまったら、チームにとっても大きなマイナスですから。選手個人を尊重して、それぞれがやる気になるように仕向けて、技術を向上させていくのが、チームにとって最もプラスになるということを認識する必要がありますね。

<<つづく>>

 

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