平 尾それは、スポーツのゲームでも同じですね。例えば、ゴール前でギャンブルをしなければいけないこともあります。その作戦を行うとき、もしうまくいかなかったら相手を崩すためにその場で次のプレーを用意しておく。つまり、選手の編集能力のようなものが求められるんです。

和 田なるほど、そうですね。

平 尾社会やスポーツは、人間の気質とかDNAみたいなものが見事に反映されていて、社会はこうだけどスポーツでは違うということは、ほとんどありません。例えば、日本人は「まねる」ということが得意ですが、そのことは社会でもスポーツでも顕著に表れています。まあ、「まねる」というと語弊があるかもしれませんが、例えばシンクロナイズド・スイミングとか体操などは、日本が得意としてきたスポーツです。ところが状況判断型の競技は、日本人は苦手です。サッカーやラグビー、ハンドボール、バスケットなど、状況によって自分がどう動くかということを瞬時に判断して反応するものですね。そこにはストーリーがなく、ゲームの方向性はある程度持っていても、後は個人の裁量が大きくものをいう。そういう競技は、本来あまり得意としていません。ただ、これも訓練によって変わるもので、サッカーなどはずいぶん変わってきたなと思います。

和 田そうですね。つまり、シミュレーションですね。日本人はシミュレーションが非常に甘いんです。外交についていえば、北朝鮮問題があります。いろいろな意見が出ていますが、「もし北朝鮮が滅んだらどうなるのか」ということをしっかりシミュレートしていない。それが、非常に心配です。ソ連崩壊は、日本にもいろいろな影響を及ぼしました。その中には、たとえばトカレフなど多くの武器が日本に密輸されるというようなこともありました。北朝鮮の問題についても、国が滅んだ場合どうなるのかということを、もっと真剣に考えるべきです。数百万という自由を求める人が大挙して日本に来る可能性はじゅうぶんにあります。そして、韓国が目指すようなソフトランディング的な解決方法も、現実的な選択肢として用意しておくべきではないかと思います。
 物事は、「風が吹けば桶屋が儲かる」ではないけれど、「こうなったら、どうなる」というシミュレーションが必要なんです。ところが、悪者を退治すればいいというようなその場の感情だけに流されてしまう。でも、その結果どうなるのか。そこが肝心です。

平 尾そうですね。波及効果がどこまであるのか。池に石を投げ入れたら、どこまで波が立って、その波が池にいる生物や植物にどういう影響を及ぼすのかというところまで見抜かないといけないですね。

<<つづく>>

 

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