和 田先頃亡くなられた日本マクドナルドの創業者、藤田田さんが、ベンチャー・ビジネスを始める人の心得として、おもしろいことを言っていました。それは、「ベンチャーをやるときは、全財産の3分の1でやれ」ということなんですが、要するに「1回で成功すると思うな」ということなんです。たとえ1回目に失敗しても、財産の3分の2は残っているから再チャレンジすればいい。都合3回チャレンジできるわけだから、方向性が正しければ必ず芽が出る。もし、3回やってもダメなら方向性が間違っているということなんだと。

平 尾いやぁ、それはうまいこと言いますね。最初から全財産を投資すれば成功すると考える人間は、たくさんいますからね(笑)。

和 田そうなんです(笑)。ビジネスを始めるときは、「うまくいくに違いない」と思い込んでしまうものなんですよ。「こんなにいいアイディアは、ほかにないぞ」って考えて、全財産を投入してしまう。それで失敗すれば、敗者復活ができなくなってしまいます。実際、そういうことは多いですね。

平 尾そうですね。ビジネスといっても、ギャンブル性が高いですからね。ただ、そこには、しっかりとしたスキームがある。「一発ではうまくいかないぞ」というのが、まさしくそのスキームなんでしょうが…。

和 田ええ、おっしゃるとおりです。

平 尾1回でうまくいったら、それはすごく運が良かったと思うことですね。ダメだったとしても、失敗してみなくては学べないことを学習したとか、見えていなかったことが見えるようになったとか、いろんな収穫はあるわけです。財産の3分の1だけをつぎ込んでおけば、失敗から得たことを参考にして、敗者復活戦に挑める。そういう余力を持っておくことは、非常に重要なことですね。

和 田いいアイディアを思いついたと喜んでいるとき、人間はやっぱり冷静さを欠いているんですね。しかも、それが「絶対にうまくいく」と信じ込んでいると、失敗したときに体勢の立て直しが難しくなる。仮に全財産をかけていなかったとしても、成功するとしか思っていないということは、次の作戦を考えていないということです。少なくともこれからの時代は、「これがダメだったら、今度はこれ」と、次を用意しておくことが必要になってくるのではないでしょうか。

 

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