平 尾しかし、時代が変わる中で、伏見工は山口先生から高崎にうまくバトンタッチしたと思うよ。今でも山口先生は高所で状況を見ながら自分の経験を基に必要に応じた指導をして、高崎は高崎でこれまで培ってきた現場での経験をいかして今の子どもたちに適した指導をしている。そういうポジションがいいよね。

高 崎時代の流れの中でちょっとやり方を変えているけれど、根本は同じで山口先生から教わった伏見のラグビーをそのまま受け継いでいる。やっぱり、“山口イズム”を持っていないと伏見工のラグビーにはならないと思う。まあ、山口先生から見たら、まだまだ歯がゆい部分がたくさんあるだろうけれど。

平 尾でも、山口先生から引き継いでからも、ある程度のチーム力をずっと保っているのは素晴らしいと思うよ。落ちるときにはガタッと落ちてしまうチームが多いのに。ずっと優勝し続けるなんてありえないわけだから、チーム力が落ちてもできるだけ早くまた浮上することが大事なんだよね。落ち込み方が大きいほど、再び上がるのに時間がかかる。逆に、落ちる幅を最小限に抑えれば、早く這い上がれる。チーム力をグラフに表したならば、高い位置でできるだけ起伏の少ない線になるようにしていくことだよね。

高 崎そう考えると、神鋼はすごいよな。

平 尾そうだね。16年間で12回、日本選手権の決勝に進出している。

高 崎ホンマ、すごいな。

平 尾僕は、それはすごく価値のあることだと思っている。勝てないときも確かにあるよ。だけど、極力少ない落ち込みで復活することができるのは、うまく新陳代謝ができているから。ある程度のところで、首脳陣を変えるとかね。

高 崎そうそう。だから、僕も山口先生から引き継いでやろうと思っているのは、継続なんだよね。いかに長い期間、伏見のラグビーが繁栄し続けられるかということ。ありがちなのは、キャラクターの強い監督が辞めたり、スター選手が引退してしまうと、そこでそのチームも衰退してしまうということ。伏見としてはそうならないようにしたいから、高い位置でチーム力をキープすることが第一で、合間、合間で優勝できればいいなと考えている。

平 尾そうなんだよね。高い位置で起伏の少ない波を描いていくのが理想的。そのためには、根はしっかりと張りながらも、必要なところは思い切って変えていくことが必要なんだよね。

<<つづく>>

 

 
 
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