平 尾それからもう一つ中垣内さんにお聞きしたかったんですが、強かったころの日本のバレーボールは、精密なトスからクイック攻撃があったり、攻撃面でも多彩だった。ところが、テレビを見ている限りでは、最近は日本のお家芸だった緻密さがなくなったように感じるんです。なんというか、ものすごく大味な試合が多くなったというか…。それは、スパイクサーブなどが出てきてサーブの威力が以前と比べものにならないほど強くなったために、レシーブの精度が悪くなり、セッターにきちんとしたボールが返らなくなったせいなのかなと。それで多彩な攻撃が少なくなってきたように思ったんです。

中垣内おっしゃるとおりですね。

平 尾それと、数年前に大幅にルールが変わって「ラリーポイント制」が導入されましたよね。それによって、日本がものすごく不利になった面もあるのかなと?

中垣内そうですね。実は、もう一つ大きなルール変更があったんですよ。サーブは、以前はネットに触れたらサーブフォルトだったんですが、ルール改正によってネットに当たってもコートに入ればフォルトではなくなったんです。

平 尾そうなんですか。

中垣内実はこれが、大きな変化なんです。ネットに触れてもOKならば、サーブを打つときのプレッシャーが少なくなる。

平 尾大胆に打てるわけですね。

中垣内そうなんです。それでサーブレシーブがセッターのところにきちんと返らなくなって、日本のお家芸といわれたコンビバレーが使えないんです。だから、高いトスで強いスパイクを打つというバレーになる。平尾さんがおっしゃるように、大味なゲームになってしまうんです。そうすると、外国人選手にはかなわない。

平 尾パワーのある外国人にはかなわないですね。僕の周りにはルール変更は日本人に有利だと言っていた人がいたんですよ。僕は専門家ではないので「そんなものか…」と思って聞いていたんですが、実際に試合をテレビで見ていたらそんなことはないと感じました。なぜ、そういうルール変更が行われたんですか?

中垣内以前のサイドアウト制のバレーボールだと、ラリーポイント制よりもずっと試合時間が長くなるので、テレビで放映する場合に、それがネックになっていたんです…。そいうこともあって、ルール変更が行われたんですが、今のところ日本には不利に働いているかもしれませんね。

平 尾プラスマイナスを考えたら、日本にとってはマイナスだと思いますね。でも言い方を変えるとラリーポイント制になって、ダイナミックなバレーボールになったということでもありますよね。

中垣内そうですね。サイドアウト制よりも、より緊張感のあるダイナミックな内容になってきていると私は思います。

平 尾そうですよね。ただ、僕はミュンヘンオリンピックの時にバレーを見ていた世代だからかもしれませんが、緻密なプレーに相手が翻弄されるというおもしろさが少なくなるのは寂しいですね。Aクイック、Bクイック、Cクイック、それに森田(淳悟)選手の一人時間差攻撃とかいろいろあって、次にどんなプレーが出てくるのか予測できなというのがすごく楽しかった。いくら高いブロックを持っていたところで、どこに飛んでいいのかわからない。その緻密なプレーに大きな相手が翻弄されるのが、僕にとってはバレーのおもしろさでもあるんですけどね。

中垣内たしかに、そういう面白みもありますよね。

平 尾ルールが大幅に変わったり、リベロという新しいポジションも出てきたりしてますが、そういう意味ではバレーボールは競技としてまだ未完成な部分もあるということなんでしょうか?

中垣内うーん、どうなんでしょうか。よくわかりませんが、ただ競技は時代とともに嗜好に合わせて変化していくのは当然だと思います。サイドアウト制からラリーポイント制に変わると聞いたときは、私自身もものすごく抵抗がありましたが、やり始めたらさほど違和感はなかった。逆に、元のルールではもうできないですね。

平 尾そうですか、そんなものですか。

中垣内そのぐらい、もう馴染んでしまいましたね。完成されているかどうかというよりも、進化し続けていけばいいのかなと思います。ただ、いい方に進化して欲しいですけれど。

平 尾そうですね。

<<つづく>>

 
 
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