平尾今の話を聞いていて感じたんですが、メディアだけでなく指導者もそういった文脈をもたないといけないですね。日本のスポーツ界の指導の中には、先ほども出てきたけれど「気合い」というすごい言葉がある。うまくいかないときに「お前ら、気合い入れろ」って言ったら、プレーがよくなってしまうんです(笑)。

村上できないことができたりもする(笑)。

平尾そう。でも、たとえばボールを放るときの手の出し方とかひじの曲げ方とか、技術的に見たらいくらでも直すところがある場合が多いんです。ところが、そういうところを見ることができない指導者は、「もっと気合いを入れてやらんか」の一言で指導してしまう。きっと、自分もそういう指導を受けてきているんだと思いますが、究極の指導ですよね(笑)。

村上たぶん「気合いを入れろ」というのは、いろんなニュアンスが入っているんでしょうね。「集中しろ」とか「恐れるな」とか。

平尾そうなんですよ。

村上すごく便利ですよね。でも、外国人選手にはきっと通用しないでしょう。

平尾しませんね。

村上それと、さっき言ったように「人に迷惑がかかる」というときの「人」という概念がバラバラになってきていることを考えると、「気合いを入れろ」という言葉もあと10年ぐらいしたら通じなくなるかも知れないですね。

平尾そうかもしれないですね。

村上柔道のような精神面を重視するスポーツならば、その言葉は生き続けるかも知れないけれど、すくなくともスポーツ以外の場面、たとえば受験勉強のような場面では確実に廃れていくんじゃないかな。大手の塾で、「気合いを入れろ」という指導をしていたら、その先生は間違いなくクビになるんじゃないですか。

平尾アハハハ、そうですね。やっぱり、これからの指導者は、テクニカルな話をわかりやすくしていかないとダメですね。

<<つづく>>

 
 
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