平 尾ところで、先ほど先生のリーダーシップの心情として、「マジョリティの意見はあまり信じない。少数派にこそ、耳を傾けるべきだ」とおっしゃいましたが、どのような思いがあるのですか。

松 尾マジョリティというのは、無難志向といいますか、変革反対という場合が多いんです。大学の中でも何かが“変わる”ということには、みんな多少の抵抗感を持つものなんで、マジョリティとしては無難な意見になってくる。だから、その意見ばかりを聞くのではなく、少数派だけど志を持っている人の意見に耳を傾けようと努力しているんです。それをやらないと、本当のリーダーではないと思ってます。

平 尾なるほど、マイノリティでも情熱を持ってぶつかってくる人間の話はきちんと聞くけれど、いくら多数意見であっても事なかれ主義のような場合はそれを聞き入れない、ということですね。

松 尾そうです。やり方はいろいろありますね。例えば、私は「総長補佐」という役割を作っています。これはと思う人を補佐に登用するわけですが、総長である私の専決なんです。とはいえ、しかるべき人たちの了解を取らなければいけませんから、部局長たちに電話をして説明します。中には、「意見を申し上げることはできますか」とおっしゃる局部長もいる。でも、私は「できません」と答えるんです。その意見は、おそらく学部の序列を考えて、利益を代表したりする人を推薦するというものでしょう。

平 尾そういう意味では、これからの大学の学術経営においても、必要なリーダーシップは、先ほど話に出た調整型よりも対決型ということになるのかもしれませんね。

松 尾そうなってくるでしょうね。名古屋大学は規模が小さいとはいえ2万人の組織ですから、一人で経営するわけにはいかない。ですが、やはりトップに立つ人間は、現状に対して常に不満を持つとでもいうのかな、その場に安住するのではなく、やや斜に状況を眺めて、変えるべきことは変えていかなければならない。それが、リーダーの姿勢だと思っています。

平 尾これまでお話をうかがっていると、先生は非常に穏やかな風貌ですが、内にはかなり熱いものを秘めていらっしゃるようですね(笑)。今後、それがどのような形で学術経営に発揮されるのか、楽しみにしています。本日は、ありがとうございました。

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