平 尾確かにそうですね。何でも白黒ハッキリさせすぎるというのは問題だと思いますが、どうしてそういう傾向が強くなったのでしょうか。

和 田テレビというメディアの影響もあると思います。見ている人がわかりやすいように、テレビは白か黒かをハッキリさせようとします。例えば、「日本は軍隊を持つべきか」とか、「常任理事国になるべきか」といった問題も、結局、軍国主義か平和主義かというように二分割してしまっています。

平 尾そうですね。

和 田第三の選択肢がいくらでもあるのに、それが思いつかない。だから、いつも両極端な二つの考え方をぶつけ合って、けんかをしたり堂々巡りになったりして結論は出ません。

平 尾テレビを見ながら、そのけんかを楽しんでいる人もたくさんいるんでしょうけれど(笑)。でも、第三の選択肢を思いつかないというのは、先ほど先生がおっしゃった引き出しの数が少ないからなんでしょうね。本来ならば、「これがダメならばこっち」というように、あれこれシミュレーションして、一番いい方法を選択すべきですが、引き出しが少なければそれすらできません。

和 田おっしゃるとおりです。

平 尾たくさんの選択肢を持ち、その中から最適なものをひとつ選ぶことができるというのは、やっぱり訓練によって養われる力だと思います。

和 田そうですね。ぼくは、教育に期待を持っているので、そういう力も教育によってある程度、身に付けられると思っています。だからこそ、もっと欲張りになるべきなんですよ。欲張りというのは決して悪いことではなく、それは上昇志向でもあります。今どき、上昇志向なんて古いと言われるかもしれませんが、昨日より今日の方が賢くなるとか強くなると思えることは、人間にとって大切なことです。先ほどのIQかEQかではなく、IQが高いならEQも高めていこうという考え方、つまりさらに上を目指すという姿勢を我々は捨てるべきではないと思っています。お話ししたように「嫉妬学」では、そういった上昇志向があれば人の足を引っ張るエンビー型ではなく、人に追いつき、追い越そうとするジェラシー型の嫉妬が生まれるわけです。

平 尾そうですね。ジェラシー型の嫉妬によって起こる健全な競争が、これからの日本には必要不可欠だと思います。本日は、どうもありがとうございました。

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