桜のジャージの14番、神戸製鋼のWTB/CTB大畑大介選手が会社の留学制度でシドニーに旅立ったのは、今年4月のこと。現在は語学学校に通う傍ら、シドニーの名門『ノーザン・サバーブス・ラグビークラブ(通称ノースクラブ)』でプレー中だ。前回のW杯優勝国でNZと並ぶラグビー王国で、果たしてどんなクラブライフをエンジョイしているのか。4年ぶりに編成された英国4協会代表ライオンズの豪州ツアー最終戦、ワラビーズ対ライオンズの第3テストマッチ観戦の機会に恵まれた平尾理事長と、初の対談で“素晴らしき王国の日々”を語ってもらった。

対談日:01年7月15日、シドニー市内のホテルにて

大畑クラブライフということで言えば、こっちに来てもう一つ驚いのは、1stから5thまで全てのグレードで同じように試合をしてるということでした。

平尾要するに「補欠」がないということだろ。選手として参加している人間は、1stから5thぐらいまであるグレードのどこかのチームに所属して試合に出られるということ。それがヨーロッパ型クラブの一つのスタイルになっている。

大畑その中でまた自分たちのチームという意識も強いんですよ。

平尾それが4本目であっても、5本目であっても、チームに対するロイヤリティは1本目と同じように高いということだよな。

大畑そうなんです。

平尾だから4本目だから恥ずかしいとか、5本目だからどうだということが一切ない。

大畑ないですね。

平尾これはすごいことだよ。

大畑今、ノースでキャプテンを務めている選手は4本目のNO8なんです。試合が終わったあとのスピーチも、1本目の選手じゃなくて彼がやるんです。

平尾たまたまケガでもして4本目にいるということじゃなくて?

大畑もともとそれぐらいのレベルのプレイヤーなんです。でも、彼は本当にこのクラブを愛していてチームの事情もすべて知っている。選手の中にはよくクラブを移る選手も多いんですが、彼の場合はそんなこともなくて、ずっとここでプレーしている。もちろん、人間的にも素晴らしいということで。

平尾クラブを移るということで言えば、逆に1本目の選手の方が動くケースは多いんだろうな、引き抜きとかもあったりして。そういう意味で4本目の選手がキャプテンを務めるというのも分かる気がするよな。

大畑そうですね。今、ノースのクラブには6000人ぐらいのメンバー(クラブ会員)がいて、そのうちプレーヤーは300人ぐらいなんですけど、全員が僕らのようにトップのグレードを目指しているわけじゃなくて、ほとんどの選手は自分のレベルに合ったグレードでラグビーを楽しんでいる人たちですから。

平尾だから、チームのキャプテンであると同時に、そうした選手の代表でもあるということ。自分は何があってもここを動かない、このチームを愛しているんだということを、皆も認めてそのことを大事にしてるということだと思う。

 

●プロフィール
大畑大介(おおはた だいすけ):1975年11月11日大阪府生まれ・25歳。東海大仰星から京産大を経て神戸製鋼入社。学生時代から快速WTBとして注目され、神戸製鋼では1年目からレギュラーを獲得。昨シーズンはCTBにコンバートされながら、持ち前のスピードを生かし神戸製鋼の2年連続、9度目の日本一に貢献。日本代表では不動の14番として代表キャップ23を数える。今年正月に出演した『筋肉番付』で初のチャンピオンに輝き、身体能力の高さを証明した。9月後半開幕の関西リーグから日本に復帰予定。

□ノースクラブ
今年で創立100周年を迎える名門クラブ。シドニーの中心地にクラブハウスを持ち、会員は約6000人。昨シーズンはNSW州選手権(今季の名称はCITIBANK MASTERCARD CUP 2001)で12チーム中6位ながら、今季は好調で首位でリーグ戦を終了。8月25日には決勝トーナメント2回戦でシドニー大学と対戦、勝てばシドニーフットボールスタジアムで行われる決勝戦に進出する。ふとももの肉離れを治療中の大畑選手も、2回戦から出場予定。

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