平尾でも、本当はノースはこんなに強い予定じゃあなかったんだけどな(笑)。

大畑僕もそういうふうに聞いていたんですけどね(笑)。

平尾今年はそこそこやるだろうとは聞いていたんだけど、開けてみたらビックリという感じだった(笑)。

大畑よそに比べて、そんなにメンバーもすごくはないんですけどね。

平尾戦略がどうのこうのという感じてもないんだろ?

大畑僕が見てる感じでは、さっきも言ったように絶対にトライを取らせないという意識が、ほかのチームより強いような気がします。負けたくないという意識が。ゲームのパターンにしても、それこそ後半に1点差まで追い込まれるようなゲームが多いんですが、それを全部ものにしているんです。ペナルティ1本とか、トライ1本でひっくり返るようなゲームを。

平尾ほーっ、そりゃあ強いね。

大畑NSW州選手権は全部で12チームあるんです。その中で今、僕のいるノースが首位なんですが、それでも一番下のチームと試合をしても1本差とか2本差なんです。日本だと関西リーグの中でも上と下では100点差ゲームというのがあるじゃないですか。そういうのがないんですよ。

平尾それだけみんなクロスゲームをしてるというわけや。

大畑そういうのを経験しているから、みんなの意識も高いしメンタル面でも強くなるというか。日本の場合だと社会人大会の1回戦とか、日本選手権に入ってからも1回戦あたりだと、まだ気の抜けるような試合があるじゃないですか。こっちだとそんなことが出来ないんですよ。でも、そういう中でプレーするのが面白くて。

平尾そういう空気を大畑自身が知ることが大事なんだよ。何でチームが強くなったのかとか、強いチームの条件とは何なのかとか、さっきも話に出た、絶対にトライを取られないという意志の強さがすごいだとか、そういうことはなかなか定義できなかったり、技術的には簡単には解明できなかったりするけれども、そういうものをまず感じることが大事だし、その空気に触れることが大畑にとってのすごい財産になると思う。あとはそれをどうやって自分の中で理論化するか。またそれをどういう形でチームに落とし込むか。それは大畑自身がこれからやっていかなければいけないことだと思う。

大畑はい。

平尾スポーツの場合、よくグラウンドの外から見ている人間が、ああだこうだと評論する場合が多いけれども、実際は自分でプレーしてみなければ分からないかということがものすごく多い。目の前の結果だけを見て、ああだこうだというのは簡単なことだけど、そこに至るまでのプロセス、どうやってその答えを導き出したかは、実際に経験した者でなければ絶対に分からないからね。そういうことが、またラグビーでは多すぎるぐらいに多い。それを大畑は今回、こちらに来たことで、またチャンピオンチームでプレーしたことで、ほかの誰も経験していないことも体験している。「何でノースというチームが強くなったのか」「何でこっちの選手は精神的に強いのか」。そういうものを自分なりに解いていって、その結果、「ああ、なるほど。こういうことだからこうなのか」という答えを出してみる。それが実際のプレーを通した経験としてものすごく重要で、それを今回得ることによって神戸製鋼はもちろん、日本代表でも貴重な情報として皆が共有できる。そうなって初めて大畑が留学したことの意義も出てくるわけで、そのためには自分の経験したことをどう言語化するか。そこまで大畑にはやって欲しいと思う。

<<つづく>>

 
 
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