平尾つまり、ルール化したり規則性、決めごとがなかったりすると、習慣として行うのが難しいということなんですね。それはラグビーでもまったく一緒で、そこを超えない限り日本は強くならないんじゃないかと思っています。ところが、規則性を高めたりシステム化をすることがチームを強くすることだと考えている方が、ものすごくいっぱいいるんですよ。個人のトレーニングをやり尽くしてこれ以上レベルアップを図るのは不可能といういところまでやって、さらにチーム力を数パーセント上げたいというときに、システム化したり決めごとをたくさん作っていくというのならわかります。でも、日本では最初からそればかりをやることがものすごく多い。それでは、個人の潜在能力を抑制してしまうのではないかと僕は思っているんです。

村上まさに、その通りですね。

平尾だから練習の方法を大きく変えて、個人の状況判断能力だとかスキルというものをベースにプレーを作っていかなければ。ラグビーというのは、個人がどういう判断をしてどういうプレーをするのかということの連続性でしかないから、それぞれの選手のいいプレーが連続したときに試合を見ている人は「ああ、いいチームプレーだな」ということになる。パスが見事に通ってきれいにシュートが決まったというのは、見方によっては素晴らしいチームプレーだけど、選手個人の感覚が一つ一つのプレーを作っていて、その連続なんです。決めごとを作っておいても、その通りにできるわけではありません。とくに、レベルが高くなるほど、決めごと通りのプレーは通用しなくなるというのが現実だと思います。

村上子どもたちのサッカーやラグビースクールが増えているけれども、サッカーならサッカー、ラグビーならラグビーという中で、カバーリングとかポジショニングというものを教えるのは無理かも知れないですね。学校とか、幼稚園から教えないと…。

平尾そうなんですよ。基本的なものの考え方が、スポーツにも影響されますから。他人とどう助け合っていくのかとか、個人をどう主張するのかとか、つまり個や集団に対する概念がまったくない人に、いきなりフィールドの中でそういった概念を教えることは難しいですから。

村上そうそう。ラグビースクールでは「自分の頭で考えて判断しろ」と言われているのに、学校では「目立つことはするな。みんなで同じことをしろ」と言われたのでは子どもも混乱してしまう。

平尾おっしゃるとおりです。そういう意味では、スポーツのほうが学校の中の指導よりもちょっと進んでいるのかも知れないですね。

村上スポーツのほうが世界との競争にさらされているから、日本的な方法が通じにくいということを痛感しているからじゃないですかね。

<<つづく>>

 
 
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