平 尾ところで、今回、元木が予選リーグの4試合に出場したら、キャップ数はいくつになるの?。

元 木65キャップですね。

平 尾65か。それだけでもすごいね。でも僕らとしたは、少なくとも70キャップぐらいまでやってほしいね(笑)。

元 木そうですね。僕も今回の大会で終わりだとは思っていませんから。体力の続く限り、挑戦していきたいなと思っています。

平 尾やってくれよ、ぜひ。65、70といわず100キャップぐらいまでやってほしい。もちろん、65キャップという数字も、当分日本では誰も抜けない大変な記録ではあるけどね。

元 木僕の次が伊藤剛臣の49キャップですね。

平 尾でも、これは僕らでもそうなんだけど、日本代表の65キャップというのは、勝った試合、負けた試合ということで言えば、圧倒的に負け試合が多いわけでね。それでも代表として試合に出続けているわけだから、これは大いに評価されてもいい記録だろうし、元木自身、誇ってもいい記録だろうと僕は思うね。

元 木ほんとに負け試合ばっかりですからね(苦笑)。

平 尾僕の場合も35キャップのうち、勝ったのは数ゲームしかないわけでね。じゃあ何ために代表としてゲームに出るかと言えば、自分のプライドであるとか、ラグビーに対する個人の思いとかね。

元 木代表として戦うためには、単にお金の問題とか、そんなことでは戦えないですよ。

平 尾そう、その一言を聞きたかった。というのは、今回からある一定期間、代表強化選手になると協会に属して、ラグビーだけをするという期間ができたよね。まあ、それについてはいろいろな意見があると思うんだけど、選手にとってはそうした環境の変化があった。それについての影響を聞かせてほしいんだけど、どんな感じなのかなと。

元 木まず良かった点は、自分の身体をケアできる時間が増えたということが一番大きいですね、僕の中では。

平 尾うん、なるほど。元木ぐらいのプレーヤーは、特にそんなふうに考えるよな。ある程度ベテランになったら、やっぱりケアする時間があったほうがコンディションが良くなると。

元 木そうですね。コンディションは本当に良くなりましたね、契約したことで。

平 尾それはいい話だな。もう一つ気になるのは、契約選手になってゲームに出たり、勝ったりすると、インセンティブという形で報奨金が出るようになったよね、ラグビーの場合も。これは僕は全然経験したことのない範疇の話なんだけど、お金がもらえるということで試合に勝とうという気は起こるものなんだろうか?

元 木それは結果として付いてくるというイメージだと思います。「お金のために頑張ろう」という意識は、一切ないですね。最初はオープン化ということで、ゲームに出るとお金がもらえるということで、みんな「やった!」とか言ってましたけど、それも試合が始まってしまえば関係ない話ですからね。さっきも言ったように、単にお金だけでは日本代表の場合は戦えないですよ。日本のラグビーを強くしたいとか、そういう強い気持ちを本当に持っていなかったら。

平 尾要するに、お金だけを目当てに身体を張ったり、命を張ったりできるかという話だよな。代表というのは、もっと違うところに価値観がある、と。インセンティブというのは、あくまで付録ということ。それも、そんなに大きなウエイトを持つ付録ではなくて、まあ、お楽しみ袋みたいなものだろう、と(笑)。

元 木そうです。イメージとしてはそんな感じです。

平 尾日本のラグビーもそれがメインになっているうちは……、本当はメインになってはいけないんだけども……、それではだめだということだね。自分の中に代表として戦うための価値観とか、選ばれたという誇りとか、もっと違うところにあるはずだと。そういういう意味で、僕はたまたま付録という言葉を使ったんだけど、たまたま代表に選ばれたら、そんなものがついてくるというね。

元 木そんな感じですね。そんなイメージです。

平 尾その位置付けでいいと思うな。でも、それで言うと、元木自身は協会との契約選手になっても、代表としての意識は昔と全然変わっていないということだね。

元 木全然変わっていません、今まで通りですね。

平 尾それはそれで、いい話だと思うね。やっぱり元木の世代には代表の誇りとか、戦   うための価値観というものを大事にしてほしい。いずれ日本のスポーツもいろいろなジャンルでプロフェッショナルというものが、社会にも受け入れられていくと思うけど、スポーツの価値観というのはそれだけではないからね。自分自身を含めて、人間的成長というものに寄与している部分も、決して見逃してはいけない。そういう意味で、元木自身の価値観を今後も大切していってほしいと思う。

元 木はい、分りました。

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