これまで、学校や企業単位で行われてきたスポーツが、大きく変わろうとしている。余暇時間の増大や健康への関心の高まりなど、人々がさまざまな形でスポーツとの関わり求め始め、行政も「総合型地域スポーツクラブ」の育成に取り組み始めている。だが、その一方では、スポーツが地域文化として必ずしもスムーズに根付いていかない現実を指摘する声も多い。スポーツを地域の“文化”として根付かせるためには、今、何が必要なのだろうか。スポーツ振興の現場をフィールドワークにしている大阪体育大学教授・原田宗彦氏と語り合った。

平 尾日本ではスポーツをある種の根性主義でやってきたところがあります。コーチングにおいても、スパルタ式のほうが結果を出すと考えられていて、多くのスポーツでそれが実践されてきた。また、「耐える」ということが人間形成に大いに役立つとされ、鍛錬とか訓練といった色合いが濃くなり過ぎていたように思います。しかし、本来スポーツには、楽しさや喜び、達成感、おもしろさなどといった、どちらかといえば遊びに近い部分があるはずなんです。それを排除してしまうのは、どうなのかと思いますね。

原 田確かにそうですね。

平 尾もちろん、スポーツをやっていくうえで耐えなければならないことが多少はあるし、時にはそれを厳しく指導されることもあるでしょう。でも、スポーツのおもしろさを感じて、そのスポーツに強い興味を抱いて、少しでも上手くなりたいんだという気持ちがあれば、「耐えろ」と言わなくても耐えていけるのが人間です。しかも、好きなことを楽しくやっていこうとする場には、上から統制しなくても自然と秩序が生まれる。だから、スポーツではそれを前提に教えていくことが大切だと思っているのですが、まだまだそういう視点を持つ指導者が少ないような気がします。自分たちが「スポーツは楽しいものだ」という教わり方をしていないからかもしれませんが、いきなり「忍耐」から入ってしまう。

原 田そうなんですね。それでは辛くて耐えられません。それに、辛い先に何があるのかということも見えない。一昔前までは、その先には一流企業の実業団チームに入って、引退後もずっと面倒をみてもらえるという考え方があった。しかし、今は入社したと思ったら、3年もたたずにクラブがなくなってしまうというようなこともあって、企業も一生を保障してくれるわけではない。そんなふうに先の見えない状況の中で、「耐えろ」と言ったところで、通用するはずもない。

 

●プロフィール
●原田宗彦(はらだ むねひこ):大阪体育大学教授
1954年、大阪府生まれ。1977年に京都教育大学特修体育学科卒業後、84年ペンシルバニア州立大学体育・健康・レクリエーション学部博士課程修了(PhD)。鹿屋体育大学助手、大阪体育大学講師を経て95年より現職に。現在、日本オリンピック委員会ゴールドプラン委員、スポーツ振興基金審査委員、Jリーグ経営諮問委員会委員なども務める。著書に『スポーツイベントの経済学』(平凡社新書)、『スポーツ産業論入門第三版』(杏林書院)など。

 

 
 
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