長引く不況の中、企業スポーツは厳しい状況に立たされている。一企業がスポーツチームを所有するというこれまでの在り方は限界を迎え、転換期を迎えている日本のスポーツ界は、今後どう変わるべきなのだろうか。社会人野球とプロ野球を経験され、現在は野球に限らず幅広いジャンルのスポーツの現場で取材活動をしている青島氏と、日本のスポーツが置かれている現状や今後について語り合った。

平 尾話は脱線しますが、せっかく青島さんに来ていただいているので、プロ野球のことも少しうかがいたいと思うんですが…。阪神タイガースの星野(仙一)監督の起用は見事に当たりましたね。選手のモチベーションが上がって開幕ダッシュはすごかった。でも、やっぱり140試合は続きませんでしたね。最終的には阪神はAクラスぎりぎりぐらいかなと、予想しているんですが(笑)。

青 島そうですね。戦力的にはやっぱりジャイアンツですね。星野さん自身、それは認めていて「戦力ではジャイアンツにかなわない」というようなことを言われてました。でも、かなわない戦力で何とか勝負をするために、「お前らはやれるんだ、できるんだ」と、選手たちに暗示にかけて、メンタリティーの質の高さで戦力のギャップを埋める努力をしてきたんです。でも、やっぱりプロだから、いくら精神的なもので埋めたところで140試合もやれば差が出てくるでしょう。その限界は、星野さんもわかっている。

平 尾野球というのは監督の采配がすごく影響するスポーツですよね。サッカーやラグビーは練習中には進行を止めて指示することができても、試合が始まってしまうと監督がゲームの中に入っていく余地はない。せいぜいメンバーチェンジをすることで、外からの影響を加えるぐらいです。でも、野球は作戦本部があってそこで戦略を立てて、実際にプレーしている選手が指令を受けて実行していくわけです。そうなると、監督の能力がものすごく問われる。例えば素人目に見ても、今季ベイスターズを率いている森(祇晶)さんは、野球を熟知しているし実績もある。でも、なかなか結果が出ない。それはどういう問題があるんですか。

青 島ベイスターズが勝てないのは簡単な話で、戦力が充分でないということですよ。ただ、能力のある監督が結果を出せないというときには、そういう理由だけではない場合もありますね。例えば、監督のやり方とチームが合うかどうかということも大きい。監督の絶対的な能力ではなく、その監督が持っているスタイルにチームの現状がピッタリ当てはまったときにはすばらしい結果が出る。例えば、僕が選手だったころの監督は関根潤三さんだったんですが、「いいおじいちゃん」といった感じで、選手に手を上げたりしない穏やかな人です。そこで、のびのびと野球をやって育ったのが池山(隆寛)とか広沢(克実)なんです。監督の持っているスタイルに当てはまったわけです。また、古田(敦也)君は野村監督に「何をやっているんだ」とさんざん言われる中で、野村さんの持っているものをすべて吸収してきた。これも、いい組み合わせだった。そういった監督と選手、あるいは監督とチームとの相性のようなものもありますね。

 

●プロフィール
青島健太(あおしま けんた):1958年4月7日、新潟県生まれ。
春日部高校から慶応大学を経て東芝へ。強打の大型三塁手として活躍した後、ヤクルトスワローズに入団。とくに、'79年に東京六大学秋季リーグでは、1シーズンに6本塁打、22打点という新記録を樹立。'83年には社会人野球都市対抗優勝、オールジャパンにも2回選出される。'85年にヤクルトスワローズに入団すると、対阪神戦で初打席初ホームランの快挙。'89年に退団後、日本語教師としてオーストラリアに赴任し、帰国後はスポーツライター、キャスターとして活躍。

 

 
 
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