平 尾スクールを運営している人たちも、元々はラグビーを子たちに教えて、うまくさせてやろうという気持ちなわけだから。だから、トップリーグが体系的な育成システムを構築して、その中で子どもたちはもちろん、指導者も育成できるようになれば、かなり競技力の向上にもなると思うんですよ。その結果、ラグビースクールの中でも有望な選手を、選抜チームのような形で地域で抱えるようなことができれば素晴らしいと思いますね。

土 田サッカーの場合は、すでにそれができていますね。12歳レベルでも地域のエリートを集めて、とかね。

平 尾2、3人の選抜でもいいから、そこに入って教えてもらうとかね。

土 田指導者も来て、練習方法とかも学べるようにもする。

平 尾そうそう、そこまで協会が面倒みるということでね。

土 田前回、オーストラリアに行ったときに、ランドイックでもやはり12歳とか10歳の子どもたちを集めて教えていた。で、そこではコーチも一生懸命、コーチング技術を学んでいた。そうすると、そのコーチもステップアップして行くわけ。なるほど、コーチもこうやって勉強するのかと思いました。実際、僕らの現場でも、この人間をコーチに育てようと思っても、素質があるかどうかを見極めるのはなかなか難しい。今度、うちでもSHの永友(洋司)が引退してコーチに就任したけど、彼に本当にコーチとしての才能があるかどうかは、実のところ未知数なんです。もし、そういう組織があるなら、そこへ才能のある人間をどんどん送り込んで、育成することもできるかなと思いましたね。

S C I X今、企業スポーツは不況の影響で存続そのものが厳しい状況にあります。実際、ラグビー界もトップリーグ入りを果たせない場合は「廃部」を決めているチームもあると聞きます。そうした中で土田さんは、サントリー自身もクラブ化の方向を目指すべきではないかと、著書の中で書かれていますが?

土 田はい、我々のチームも会社から運営費を出してもらっているだけでなく、出来れば独立したいと考えています。だから、ファンクラブなども立ち上げたり、自分たちで稼いだものは全部チームに入れて、その中でチーム運営も含めて何か出来ないかと思っています。例えばラグビースクールとか、地域との密着も含めてやっていきたい。その一方では、神戸がやっているように、神戸製鋼ラグビー部はあるけれども、SCIXを立ち上げて、そこに協力してもらうというやり方もあるのではないか。そこのいいとこ取りをして(笑)、ミックスしてできないかなというところで、今、いろいろとやり始めています。

平 尾いやあ、神戸製鋼とSCIXはちょっと違うんだよ、イメージとしては。確かにSCIXラグビー部は神戸製鋼のグランドを借りてやっているけれども、SCIX自体の運営はいろんな企業に協賛していただいて、実際、サントリーさんからも協賛費をいただいてやっているからね。

土 田完全に両者を分けてやっているわけ?

平 尾そう、全然違う。要するに、神戸製鋼のグランドをお借りしていますよということ。指導者も出してもらってはいるけど、それはひとつの地域社会貢献でね。だから、SCIXラグビー部の出身者がサントリーに就職することも、トヨタ自動車に行かせてもらうこともある。そんなのことは全然OKなんですよ、僕らからしてみればね。

土 田それはSCIXがスポーツNPOであり、独立しないと活動出来ない部分も出てくるというところがあったわけでしょう?

平 尾それもあるね。

土 田我々としては、それを独立しないで、しかもこのクラブが会社から離れながら、そういう活動ができないかなというところで、今、模索しているところなんです。
それは、平尾が始めた時には、「まだまだできないな…」というところで、たぶん独立したと思うんだけど、今回のトップリーグがきっかけになるか何かで、うまくそれが出来ればなあと。

 

 
 
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