『フットボール・コーチングセミナー9』開催レポート

第1部:フットボールクリニック
   『フットボールにチャレンジしよう』

1.狙い

フットボールクリニックサッカー・ラグビー・アメリカンフットボールという3つのフットボールの一大拠点である「ホームズスタジアム神戸」にて、小学生に3つのフットボールを体験してもらい、それぞれの競技の魅力を知ってもらう。

神戸とその近郊には、ヴィッセル神戸、コベルコスティーラーズ、関学アメリカンフットボール部という、それぞれの競技で優れたチームが存在している。
その指導を実際に見学・体験してもらい、地域の指導者の方々の今後のコーチングに役立ててもらう。

3つのフットボールを同時に行うことで、普段は接することのない他競技の指導方法を見学してもらうことができる。

2.オープニング

フットボールクリニック当日は、見事な秋晴れの中、ホームズスタジアム神戸横の芝生広場に、地元の元気な小学生100名が集まった。

芝生広場の周りには、子供たちを見守る保護者、見学に訪れていたそれぞれの種目の指導者が集まり、クリニックの様子を真剣な表情でうかがっていた。

定刻、八木アナウンサーの「ただいまより、3種フットボールクリニックを開催します!」という声で、開幕。

コーチ陣3名の自己紹介が終わると、ヴィッセル神戸サッカースクール・春永コーチの指導のもと、相手を見つけてじゃんけんを行ない、10回勝った人からコーチの元へ走るというユニークな準備運動がはじまった。
一度目が終わると、今度は体を使ってのじゃんけんになり、なおかつ目標のコーチが逃げ回るので、子供たちは充分にウォーミングアップができたようだった。

準備運動が終わると、いよいよクリニックの開始。
小学生は、3グループに分かれ、それぞれサッカーエリア・ラグビーエリア・アメフトエリアに移動した。

3.サッカーのクリニック

フットボールクリニックサッカーは、ヴィッセル神戸サッカースクール・春永コーチを中心に、ヴィッセル神戸普及・指導部がクリニック指導を行った。

サッカーは、「シュートで終わる」ということが重要であり、また、ゴールを決める楽しさを体感してほしいということから、シュートの練習から始まった。

まず、コーチから出されたパスを受け、そのまま思い切りよくシュートを放つ練習を行なった。
慣れてきたところで、自分からコーチへパスを出し、コーチから戻ってきたボールをトラップし、シュートを放つ練習に変わった。

シュートを放つときは、足を固定して思い切り振り切ることがポイントであるとコーチから指導があった。
サッカー未経験者も、コーチの指導をよく聞いて、だんだん力のこもったシュートが打てるようになっていた。

最後に、3つのスペースに分かれ、4対4でのミニゲームを行った。
この際、コーチ陣がこまめに動き、子供たちのプレーを観察。積極的にシュートを打つようにと、指導を行った。

指導者へのポイントとしては、子供たちのプレーをよく見て、よかったプレーには何がよかったのか、失敗したプレーには何が悪かったのか、教えるだけではなく、一緒に考えるようにとのアドバイスがあった。

4.ラグビーのクリニック

フットボールクリニックラグビーは、コベルコスティーラーズとSCIXラグビークラブが指導にあたった。

まずは、パスの練習から始まった。
サイドに分かれ、相手に向かって走り出し、すれ違いざまにパスを出す。最初はゆっくりと走っていたが、慣れてきたところでコーチから「トップスピード!」との声がかかり、加速するよう指示が出された。その途端、あちこちでボールを落とす子供たちが出てきた。

このときのポイントは、向かってくる相手めがけてパスを放るのではなく、走ってくる相手の手前空間にボールを浮かしてやる感じでパスをすること。また、受ける側は手を上げて合図をしてやるようにとの指示があった。

次に、5人一組になり縦一列になって前へ走り、後ろから前の選手へパスをしながら最終的に全員がゴールするという練習が行なわれた。一番最初にパスを出した子供が、最後の子供からパスを受け取って終了。
コーチからは、「速く、速く」という激が飛んでいた。

最後に、SCIXが独自に提案しているスペースボールを行った。
この競技は、ラグビーからオフサイドの概念を取り外し、前後左右、どちらに位置する味方にもパスやキックでボールをつなぐことができるので、グランド

全体を広く使ってボールをつなぐ、スペース感覚を養うことができる。前方にもボールを放ることができるので、ラグビーよりも攻撃権の入れ替わりが早く、選手はスペースを見つけてどんどん動き回りボールに触れることができた。

指導者のためのポイントとして、空いているスペースがどこにあるのかヒントを与えたり、なぜパスがうまくつながらなかったかを具体的に説明するなどして、自分がどう動けばいいのかを自分で考える手助けをしてあげることが重要であるとの指導がなされた。

5.アメリカンフットボールのクリニック

フットボールクリニックアメリカンフットボールのクリニックは、関西学院大学アメリカンフットボール部が指導にあたった。

ほかの2競技より未経験者が多いアメリカンフットボールでは、まずはアメリカンフットボールのボールを使ってキャッチボールすることから始まった。

次にコーチが投げたボールを走っていって受ける練習が行なわれた。
最初は緩やかなパスから、慣れてきたところで速いパスが出され、子供たちは必死にボールを追いかけ、受けられると、コーチが「ナイスキャッチ」と声をかけるよう指導。何度も「ナイスキャッチ」の声が聞こえた。

パスのキャッチに慣れてくると、今度はパスを受けた後、目の前のディフェンダーを抜くという練習に切り替わった。
どの子供たちも、自分の腰に下げたフラッグを取られると、タックルが成立したという想定なので、必死でディフェンダーをかわし、またディフェンダーもフラッグを取ろうと懸命に相手を追いかけていた。コーチたちは、子供たちがどう相手をかわすかを観察し、いいプレーがあると大きな声で褒めていた。

指導者へのポイントとしては、まずは競技を楽しませること。そして、いいプレーができたら褒めて、どんどん自由な発想でプレーをさせ、またその中で自分なりの考えを身に付けさせる習慣が大切であるとの指導があった。

6.閉会式

3種全ての体験が終わると、閉会式が行なわれた。

最後に、各コーチからどの競技にも共通して言えることとして、「空間を意識したり、コミュニケーションを取り合ったり、スピードを工夫したり、自分でいろいろ考えながら一生懸命練習してください」という共通したメッセージが子供たちに送られた。

7.まとめ

当日は子供たちの体調管理に努め、水分の提供、けが人が出たときの対応なども注意して行った。結果、クリニック終了後も、子供たちは元気いっぱいだった。

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