ビジネスの世界では「コーチングばやり」とでもいうような状況で、コーチングに関する本がたくさん出版されています。そのコーチングは、言うまでもなくスポーツ界から端を発したわけですが、にもかかわらずしっかりと体系化されていないというのは、意外な気がしました。

勝 田確かにそうですね。スポーツの世界でもコーチングの本はたくさん出版されています。それらを読んでみると、だいたい二つに集約できます。ひとつは、学問的な指導論、つまり「指導書」といわれるものです。もうひとつは「グレートマン・セオリー」と呼んでいるのですが、成功した人が自分の経験談を書いたものです。前者の「指導書」に分類される書籍の多くは、指導論なのかコーチング論なのかはっきりしていません。たとえば、学問的に指導論とうたわれている書籍の内容を見ると、生理学や心理学、体育の授業研究などが入っています。いわゆる体育教科の学問領域をそのまま指導論に持ち込んでいるんです。学者は自分の専門分野について本や論文を書きますよね。それがスポーツの領域ならば、心理学者はスポーツ心理学を、生理学者はスポーツ生理学について記すわけです。いわゆる指導書というのは、そういった専門分野を寄せ集めて一冊にしているという感じなんです。それでは現場の人たちには、遠すぎるんじゃないでしょうか。

もっと現場に近い立場でのコーチング論が必要だということですね。

勝 田そうですね。現場の人たちに手にしてもらえるような内容のものにしたいと思いました。

 

一方の「グレートマン・セオリー」は、さまざまな競技の「名将」と言われる人たちが書いていますね。

勝 田成功した人たちが自分の歩んできた道を書いたグレートマン・セオリーからは、確かにいろいろなことが学び取れると思います。ただ私が思うのは、成功したコーチ、勝たせたコーチの声だけでいいのか、ということなんです。1人の選手が成功を収める場合、たとえば育てたコーチもいれば、子どものころスポーツの虜にしてくれたコーチもいるわけです。僕自身のつたない経歴を繙いてみても、勝たせてくれたコーチだけでなく、最初にラグビーのおもしろさを教えてくれたコーチをはじめとして、たくさんのコーチがいる。そういう人たちから学ぶことも、いっぱいあるはずです。だからこそ、コーチングは系統立てられなければいけないし、明らかに体系化されなければならないと考えています。そして、これからコーチングを学んでいこうとする人たちや、現在現場にいる人たちの参考になればと思い、この本を書きました。

 

 
 
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